日当たりの悪い庭

昔住んでいた小さな家は隣にマンションが建っていたからか日陰になることが多く、冬場になると庭に積った雪はなかなか溶けにくかった。
縁側の窓には大人のみぞおち程まで積った雪の、襲いかかる様な断層が望めていつか窓ガラスを破るのではないかと子供心ながらに少し不安があったが、大抵はその光景を楽しんでいた。
その反面夏場は涼しく、庭にテーブルと椅子が一体化したキャンプ用のそれを出して、スイカを食べては、大きな巣を張った蜘蛛めがけて種をとばした。スイカが庭に生えてくる事を期待していたが、勿論生えてこなかった。
日当たりが悪かった庭には限られた植物しか生えず、苔だとかゼンマイだとかどこにでも生えるカモミール、ちょっと日当たりのいい場所にはホオズキが控え目にいて、私はホオズキが怖かった。
野生のニラも生えていて、オモチャのざると器で、水を落として石で潰しそして濾して「ニラ茶」なる物を作って姉とママゴトをしていた。
深い緑色のニラ茶はそのまま放置したら次の日茶色く変色していて、それを不思議に思った。