ツキノワグマちゃん

幼い頃住んでいた家の近くには保健所があって、決まった曜日になると保護されている仔犬仔猫を広場に出して遊ばせている。
それを外から見るだけではなく、私達も中へ入って犬猫と触れあう事ができて、気に入られれば引き取り主が見つかるという訳なのだ。でもその時の私の家では動物が飼えなかったので、その曜日になるとただ遊んでそれでサヨナラだった。
仔犬の中で取り分け私が気に入っていたのは全身茶色で胸元に白い模様のある日本犬で、その姿からツキノワグマちゃんと命名して追っかけ廻したり、抱っこしたりして、しつこくし過ぎて逃げられたり、そこらじゅう転がるフンなんか気にしないで、この子と家で暮らせればなあ等と考えては胸が苦しんでいた。
ある日以来、保健所の前へ今までの曜日に行ったが、仔犬仔猫の放し飼いタイムはやらなかった。私は、ツキノワグマちゃんはこのコンクリートの建物の中にいて、元気に遊んでご飯を食べて、でもきっとその日は調子が悪いのだなと思った。